お気持ち練習帳

気持ちの整理や数学等の書きたいことを書きます

【読書記録】基礎統計学I 統計学入門

何の本を読んだの?

(主観で)和書でいちばん有名な数理統計学であるこの本を読みました。数理統計学の本は何冊か持っていますが、何故かこの本だけ持っていなかったので買いました。読んだと書きましたが、時間もそこまでないので、一行一行行間を埋めることはせずに文章にざっと目を通して、知らない部分だけ読む形で一冊目を通しました。

感想とか

書いてある範囲としては、数理統計学の入門書としてよく書かれているものがきっちり書かれているという印象でした。キーワード的には、以下のことが書いてありました。

  • 統計学の歴史
  • 記述統計学(代表値、相関係数等)
  • 確率の定義や簡単な性質
  • 確率変数(期待値、分散、モーメント等)
  • (1次元の)確率分布(代表的な確率分布)
  • 多次元の確率分布(相関、周辺確率分布、条件付き、独立性など)
  • 大数の法則
  • 中心極限定理
  • 有限母集団修正
  • 点推定
    • 最尤法、モーメント法
    • 推定の基準(不偏性、一致性等)
  • 区間推定(信頼区間)
  • 仮説検定
  • 回帰分析(単回帰、重回帰)

こうやって列挙すると色々書いてますね。これだけで統計検定1級数理の範囲をかなりカバーしているように感じました。数理の資格取るためには、ここから過去問解いたり、一部試験範囲を勉強する必要があると思いますが。

読んでいて知らなかった・忘れていたなと思った部分としては、統計学の歴史的な部分ですね。ジョン・グラントの死亡表の集計とか、フィッシャーが統計的推測のはしりであるとか、コルモゴロフ以前の確率の定義など。偏相関係数や決定係数の意味など。同じような内容を扱った本でも、本ごとに特徴があって知らないことを知れて良かったなと思いました。また、この本を読んで実はこれってどうなんだろうという疑問もいくつか出てきたので、後で他の文献で調べてみたいと思ってます。例えば、なぜ二項分布でなくポアソン分布で現象をモデル化したいのか?nとpがわからないから、ポアソン分布にするの?とか。

最後に、他の数理統計学の本と比べてのこの本の特徴をいくつか述べて終わりにしようかと思います。

第一に、この本は数学書の典型的なフォーマットでは書かれていないこと。ここでいう典型的なフォーマットとは、数学的な主張(定義、補題、命題、定理等)を述べるときは、主張部分を明示的に分かるように段落分け等をして記述することやどこが証明かを記述することです。本書では、色々な統計的対象の性質や定理を紹介していますが、明示的に証明している部分は少ないように感じました。その代わり、どういう気持ちで性質が成り立つのかを文章で説明したり、例で説明を補強するスタイルに見えました。

第二に、測度論にはほぼ立ち入らないこと。これは他の多くの数理統計学の本でも、このようなスタイルだと思います。確率の定義はコルモゴロフの定義を紹介していますが、分布に入ってからは離散と連続に分けてシグマと積分でほぼほぼ説明していました。