はじめに
この記事は Math Advent Calendar 2020 の12月12日分の記事です。 今年は新型コロナの影響で、在宅勤務が増えて時間も増えましたが仕事の勉強やら体調がよろしくなかったことで、あまり数学ができませんでした。 このままでは、今年度なんのアウトプットもできずに終わってしまうなと思い、アドベンドカレンダーの記事を書くことにしました。
今回書くのは、正標数での超越数の話です。 超越数の証明法には色々ありますが、その中でも Wade's method とよばれる方法で、面白い証明だな~と思ったので紹介したいと思います。 ただ、Wade's method がどんな方法かは今回紹介する定理でしか知らないので、一般的にではなく具体例での紹介しかできないです。
定理の紹介
この記事では [O] の定理1を紹介しますが、実際の論文では超越数であることを示すだけでなく超越数度という定量化も示しています。 行間を埋められず超越数であることしか、私が分かってないのでそこまでを紹介していきます。
を素数、 を正整数とし、 を位数 の有限体とおく。 を係数 のローラン級数体とおく。
証明
が代数的だと仮定する。 このとき、 ] で かつ となる多項式が存在する。 とおき、任意の に対して となる整数 をとる。 また、任意の に対して、以下の条件を満たす整数 を定義する:
より、 となる。 また、 のときは となることに注意。
] を示す。 任意の に対して、
したがって、] となる。
を示す。 に対して、 の定義より、
そのため、
とおくと、] が存在して、 とかける。 に対して、 のとり方より、 となる。 より、 となるので、
また、
より、
よって、 となる。
となるため、 となる。
最後に、 を示す。 の定義と より、となる。 の各項に対して、
よって、 となる。
したがって、
となるので矛盾。
最後に
級数の超越性を示すのに、素数ベキの冪乗を取ることででうまく項ごとに取り扱えるようにして、整数部分と小数(?)部分に分けて示しているのがおもしろポイントだなと思っています。 このような手法で、超越数度も計算できるのもお気に入りポイントです。 この手法で、正標数でのゼータ関数の超越性も計算できるらしいので、その証明も追いたいなと思ってます。 また、このくらい素朴な手法なら代数的独立性の判定もいけそうなので、手法自体の歴史を追ってみて何かしら研究できたらいいなって感じです。
参考文献
[O] Ahmet S. Ozdemir, On the measure of transcendence of formal Laurent series, International Journal of Maps in Mathematics, vol 2, issue 1, 2019, 99--107.